道端の小石のように

考える日々。

近況

ちょっと更新が停滞してしまっているので、この頃の近況とか普段思っていることを書いておくことにする。(一ヶ月おきの更新もわりと大変なのかもしれない)

 

再来年に小説を応募する予定で、来年いっぱいは執筆に専念することになる。哲学をやっていたりその他諸々の勉強をしたりしているのは小説の題材という半面もあるのだけど、だからといって小説のアイデアのために中途半端にそういうことを勉強しているのではなく、小説というのは自分の考えをしっかりとした形として表すだけのことにすぎない。というのは、たかだか小説なり文学であったとしても、そこでしっかりと伝えられる種類の知識も存在すると思っているため。

平たく言うと、物語というものは哲学の思考実験の具体例として機能するものだと自分は考えている。ただ、そういう種類の作品はとても珍しいと思うし、ほとんどまったく存在していないか、世間に受け入れられていないか、不完全に終わっていると感じる。そういう意味では、いま書いているものは(自分で言うのはおこがましいが)自身にとって完全であるような最高の作品に仕上げたいと思っているし、そのための核心となるアイデアも4年ほど前から持ち合わせている(ようするに構想期間ってやつだ)。というわけで、いまは肉付けの段階であり、作品や物語に説得力を持たせるために工夫を凝らしている準備期間ということになる。

自分は自分のことをクリエイターであると認識している。たぶん、これから先もそういう認識であり続けると思う。世の中の作品群に対して自分が持っている不満は、それが厳密な内容を持っていないということ、さらに言うと現代の先端的な議論を持ち込んでいないということだ。哲学がテーマになれば、いかにも皮相で、古臭い主張が登場する。SFに限っては、科学の知識の寄せ集めでしかないものだったり、あるいはまた哲学の観点が完全に欠落しているものも少なくない。それらは十全な知識体系として成り立っていない。それが自分にとって随分と前から不満だったので、自分でやったほうがいいだろうと思うようになった。

難解なテーマの作品は確かにウケないし、ヒットする見込みも少ないだろう。だが本当にそうだろうかと思う。最近は、難解な知識であると世間的に思われている心身問題やクオリア、あるいは分析哲学の問題を非常にスリリングかつわかりやすく説明している本も多数登場してきている。また、相対性理論量子力学に関する明快な入門書も多く存在しているし、ガロア理論位相幾何学といったものを高校生レベルから理解するための本も数多く出版されている。かくいう自分も数学や物理を毛嫌いするほど難しい、苦手だと思っていた時期があったが(実際に難しいことには間違いないが)、その多くは教え方(または教わり方)の問題であったり、自分の率直な疑問点や知りたいことが本に書かれていないことに起因しているようだった。ネットで検索すれば、非常にわかりやすく、同じ対象について説明しているはずなのにこうもわかりやすいものか、と感じられるような細かな説明がたくさん存在している。それは、一昔前の数学書の傾向があまり初学者向けではない専門的な内容であるのに比べると、そこまでの橋渡しをするための本が人気を博し、図やカラーで装飾されたビジュアル面に配慮した内容であったり、より噛み砕いた対話形式の内容もよく見かけるようになっている。実際にそれが人々をよりハイレベルな段階に導くとは限らないにしても、少なくとも不毛な数学嫌いや数学に対する偏見といったものを排除することには成功しているはずだし、それは商業的にも喜ばしいものであるはずで、優れた啓蒙書というものはどの分野においても必要であると思えるし、何も知らない人間を楽しませて、良い知識をもたらすことは、どの時代でも行われてきた必要な文化的な営みであると信じている。

難解な小説やフィクションというものに必要とされるものも、まさにそういうことではないだろうか。わかりにくい、わかりやすいといった単純な話なのではなく、もっと総合的に見てみれば、「その知識がどのように役に立つのか」とか、「なぜこの問題が歴史的経緯から生じてきたのか」などといった、ようするに「知りたい」「気になる」という気持ちを純粋に喚起させる説明や表現が大事であるのかもしれない。それは難しい知識に挑戦する際にとても大切なモチベーションになるに違いないと自分は信じている。

相変わらず堅苦しい内容になってしまったので、次回からはちゃんとウケのいい感じの日記を書きたい……(いやー、色々あるんですがね。読んだ哲学書の感想とか、思考実験とか。まあそれは追々やるということで……)

 

追記……誤解を招いてしまいそうなので、一応言っておくと哲学(あるいは哲学に関連する)の分野でも何かしら結果を残したい気持ちがあるので、そこだけは取り違えてもらいたくはない。まあ、随分と先の話になりそうである。老ホワイトヘッド然り、世の中にはなすべき物事の順序というものがあれこれ(言い訳